相談事例

CASE

【お知らせ】いよいよ来年4月1日から相続登記の義務化がスタートします。

2023.7   櫻井

相続登記の義務化

「6年前に亡くなった親の名義のまま、名義変更していない不動産があるのだけれど大丈夫?」「不動産屋さんから相続登記が義務化されると聞いたけど、私はとりあえず何をしておかなければならないの?」「相続登記の義務化で罰金がかかるってどういうこと?」最近このような問い合わせが増えました。これまで表題登記(不動産の特定が主な目的で、所在・種類・面積など物理的な情報を登記します。)以外の登記は義務ではなく、登記は主として自分の権利を守るために(権利登記)権利者が自主的に法務局に申請するものでした。

それでは何故、権利登記である相続登記は義務化されることになったのでしょうか?

全国にある「所有者不明土地」を合わせると九州本島を上回る面積となり(令和2年度国土交通省の調べによると国土の24%)、今後もまだまだ増加すると予想されるからです。「所有者不明土地」とは、「不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地」「判明しても所有者と連絡がつかない土地」のことで、平成23年に発生した東日本大震災の後、所有者不明土地が復興事業の妨げとなりクローズアップされました。この問題は都市計画を進めるうえで障害になるだけでなく、「お隣に倒壊しそうな空き家があって危険なので所有者と連絡を取りたい」と思っても所有者が分からず対策ができないなど、身近な問題でもあります。昔は亡くなった親の所有していた不動産をその子らが取り合って争うこともありましたが、今は田舎の親の土地は誰も欲しいとは思わず、押し付け合うこともあります。このようなケースでは、たとえ相続しても相続した土地の価値は低く売却が難しいため、費用や手間をかけてまで登記をしようとは思いません。

相続登記が未了のまま放置されることが所有者不明土地の主な原因であることから、この問題を解決するため、「相続によって不動産を取得した相続人は自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記をしなければならない」こととなりました。そして、正当な理由がなく義務に違反した場合、10万円以下の過料(行政罰)に処せられます。また、相続登記をしないことで将来様々な問題が発生する可能性があります。何代かの相続登記を放置すると相続人はネズミ算式に増加し、数十人、まれに数百人と連絡を取らなければならなくなることがあります。このような場合、相続人調査だけでも数か月かかりますし、費用もかなり掛かります。「突然、固定資産税の未納通知がきた。」「草木が茂り害虫が繁殖している、不法投棄が行われ異臭がする等の苦情が近隣住人から寄せられた。」と驚いて相談される方もいます。また、放置された不動産は地面師(不動産の所有者になりすまして買主から代金を騙し取る詐欺師)に狙われることもあります。

相続登記の義務化に際して以下の優遇策も創設されました。

①法定相続情報証明制度(法定相続情報一覧図)

この制度は、登記のみならず、預金、保険、証券等の相続手続きに利用できます。
詳しくは相談事例をご覧ください。

②相続人申告制度

相続人間で話し合いがつかないとき、この制度を利用すると過料に処されることはありません。

③相続土地国庫帰属制度

相続したものの不要な土地の所有権を国に移転できます。但し、要件はかなり厳しいです。
詳しくは相談事例をご覧ください。

④以下の相続登記の登録免許税の免税措置(令和7年3月31日まで)

死者名義にするための土地の相続登記(相続登記が未了のまま死亡した場合)
不動産の価格が100万円以下の土地の相続登記

⑤相続等の登記手続きの簡略化

相続人に対する遺贈登記や買戻特約登記の抹消など、これまで共同で申請する必要がありましたが、単独申請できるようになりました。
詳しくは相談事例をご覧ください。

相続登記をしないまま放置することにメリットはありません。子孫に禍根を残さないためにも早めに着手されることをお勧めします。法務局のホームページでもわかりやすく解説されています。「相続登記の義務化」は、この法律の施行日前に相続の開始等があった場合にも適用され、本稿の初めに紹介した質問のケースにも適用されます。すでに相続が発生している場合には来年4月1日から3年間以内に相続登記をすればよく、それ以降に発生した相続についても3年間の猶予はありますから、怖がる必要はありません。ご不明な点は何なりとご相談ください。 

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