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【民法大改正】賃貸借契約はどう変わりますか?

2017.7 担当者 の回答

1)民法大改正について

民法は、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与える法律であり、詳しい内容は知らなくても名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。現在の民法は、約120年前に制定され、細かい改正は何度か実施されたものの、抜本的な改正は行われてきませんでした。その間に社会や経済は大きく変化したため、民法が現代社会にそぐわない部分もあり、民法の中でも主に「債権」の部分で抜本的な改正が行われました。

2017年(平成29年)526日、参議院本会議で改正民法が可決、成立しました。2020年(令和2年)4月1日に施行されます。

 

では、賃貸借に関する改正点をご説明します。

2)貸借契約の存続期間が伸長されます

現行の民法では、賃貸借契約の存続期間は20年を超えることができません。また、契約を更新する場合でも、更新後の期間は20年を超えることはできませんでした。例外的に、建物の所有を目的とした土地の賃貸借(借地権)については、借地借家法で存続期間は30年以上とされています。しかし、現代では、ゴルフ場の敷地や太陽光発電設備を設置するための土地の賃貸借など、建物所有を目的としない土地の賃貸借について、20年を超える長期の契約期間を求めるニーズがありました。

そこで、改正民法では、存続期間を50年に延長し、長期の賃貸借契約が可能になりました。ただし、50年を超える契約期間を認めると、貸主に過度の負担になるおそれがあるため、存続期間は50年を超えることができないと規定されます。50年以上の契約期間を希望する場合は、契約を更新して対応することになります。

3)敷金が法律に明記されます

敷金とは、賃貸借契約に関する借主の債務(賃料債務など)を担保する目的で、借主が貸主に対して交付する金銭をいいます。しかし、現行の民法には敷金に関する規定はなく、判例によって取扱いが確立されてきました。そこで、改正民法では、敷金の定義や返還時期を明確に規定しました。

改正民法では、敷金の定義として、名目を問わず、賃貸借に基づいて生じる借主の貸主に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、借主が貸主に交付する金銭とされています。また、敷金返還の時期については、賃貸借契約が終了するだけでなく、貸主が借主から目的物の返還を受けたときに、借主の未払い債務を控除した残額を返還しなければならないと規定されています。また、借主Aが適法に賃借権をBに譲渡した場合、特段の事情のない限り、Aの差し入れた敷金は新借主Bに承継されず、貸主は借主Aに対して、敷金を精算することになります。これらは、判例の見解が明文化されたものです。

4)原状回復義務が具体的に規定されます

現行の民法にも、賃貸借契約が終了したときの原状回復義務に関する規定は存在します。しかし、改正民法では、判例の見解を明文化し、より具体的に明記されるようになります。

改正民法では、借主は、賃借物を受け取った後に生じた損傷がある場合、賃貸借契約が終了したときにその損傷を原状に復する義務(原状回復義務)を負います。しかし、原状回復義務を負う範囲について争いになることがあり、通常の使用をした場合に生じる通常損耗や経年変化については原状回復義務から除外される旨が明文化されました。これも判例の見解が盛り込まれたものですが、通常損耗や経年劣化の費用については、あらかじめ賃料の中に含ませて回収していると考えられ、原則として貸主が負担することになります。また、借主の責めに帰すことができない事由によって生じた損傷についても、同様に原状回復義務から除外されています。

5)適用範囲にご注意

改正民法が施行されたとしても、すでに締結済みの賃貸借契約にそのまま適用されるわけではありません。改正民法の附則では、施行日前に賃貸借契約が締結された場合、この契約についてはなお従前の例によると規定されていますので注意が必要です。ただし、施行日前に契約が締結されていても、施行日以後に契約更新の合意をする場合は、50年を超えない期間で更新することができます。

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