相談事例
CASE
2017.1 担当者 の回答
保証人は、主たる債務者(実際にお金を借りた人)がその債務を履行しないときに、その履行する責任を負うとされており、その範囲は主たる債務に関する利息や違約金、損害賠償なども含まれるという非常に重い責任を負っています。中には、親戚や知人から頼まれて断りきれなかったり、保証人という立場をよく理解しないまま保証人になったケースも少なくないと思われますが、主たる債務者が支払い不能に陥ると、保証人に対して多額の請求がなされ、保証人がその責任に耐え切れずに破産したり、最悪の場合は自殺に追い込まれたりすることもありました。
そこで、改正民法では、①事業用の金銭の借入等について、②個人が保証人になる場合には、③保証契約の前1か月以内に公正証書を作成し、保証人が保証の意思を表示しなければ、原則として保証契約は無効になるとしています。また、その公正証書には、主たる債務の元本だけでなく、利息や違約金、損害賠償などの従たる債務なども記載する必要があります。
例外として、主たる債務者が法人である場合に、保証人が当該法人の取締役や理事である場合(経営者)や当該法人の議決権の過半数を有する者である場合(大株主)には、適用されません。主たる債務者が個人事業主である場合に、保証人が共同経営者である場合や主たる債務者の事業に現に従事している配偶者である場合も同様です。また、この制限は、事業用の金銭の借入を対象としており、個人の住宅ローンや賃貸住宅の家賃の保証人などは対象外となっています。
前述のとおり、保証人は非常に重い責任を負うことになるため、事業に関する債務の債務者や債権者は、保証人に対して情報提供義務を負うことになります。
保証契約締結時においては、事業に関する債務の債務者は、債務者からの委託を受けて保証人になろうとする個人に対して、債務者の財産及び収支の状況や、他に負担している債務などの情報を提供しなければなりません。また、保証契約締結後においては、債権者は、債務者から委託を受けた保証人に対し、元本及び利息、違約金、損害賠償などの不履行の有無やその残額などの情報を提供しなければならないとされました。もし、債務者が返済を怠ったことにより期限の利益を喪失した場合(残額を一括返済しなければならなくなった場合)は、債権者は、それを知った時から2か月以内に個人の保証人に対して、その旨を通知しなければなりません。
今回の改正では、個人保証を原則禁止とすることは見送られましたが、要件が厳格化されることになりました。