相談事例

CASE

公正証書遺言であれば自分の意思を確実に実現できますか?自筆証書遺言では無理でしょうか?

2017.1   担当者 の回答

(「在日韓国人が遺言書を作成する場合に注意すべき点はありますか?」をご参照ください。自筆証書遺言の要件が緩和されています。また、法務局での自筆証書遺言の保管制度が2020年(令和2年)7月10日からスタートします。)

 

「遺言書」という言葉を耳にすると、「何を書こう?」と内容のことばかり気になるのではないでしょうか。遺言は自分が蓄えてきた大切な財産を、遺言者が亡くなったときにどのようにしたいか、遺言者の意思を実現するものです。そのため、「財産の行方をどうしよう」と内容のことで頭が一杯になりますが、注意しなければならないことがあります。それは遺言者が亡くなった後に、その内容が実現されなければならないということです。

 

遺言の代表的な方法は自筆証書遺言です。これは、遺言の内容、日付、氏名等すべてを自書して押印しなければなりませんが、費用もかからず、自分が書きたい時に書けるので、手軽であるといえます。

しかし、遺言者が亡くなったときに、相続人等がこの自筆証書遺言を発見し内容を見てみたら、遺言書の作成日には既に遺言者の認知症は相当進行しており、「遺言能力がなかったはずだ」、「誰かが手を添えて書かせたのではないか」等、遺言者が亡くなった後に遺言の有効性が問題となり、裁判になるケースも増えています。また、遺言をちゃんと書いていたのに誰にも言わず秘密にしていたため、せっかく書いた遺言書を相続人が見つけることができず、遺言者の意思が反映されないまま相続手続が進んでしまうことや、遺言書の存在を知っている人間が、自分に不利な遺言であるため隠匿、破棄するということもあり得ます。

自筆証書遺言は確かに手軽ではありますが、無効になるなど実現できなければ、遺言を書いた意味がありません。

これらのリスクを回避するため、自分の財産の行方をある程度決めた場合には、公正証書での遺言書の作成をお勧めしています。公正証書遺言は公証人が作成し、証人2人の立会いが必要となりますが、遺言を作成する際に公証人が遺言能力の有無を確認した上で作成するため、上記のような問題は発生しにくいのです。また、実際に遺言者が亡くなったときに、自筆証書遺言で必要となる検認手続(家庭裁判所において、検認日の時点における遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止する手続)も不要ですので、遺言の内容を速やかに実現することができます。また、公正証書遺言は公証役場に保管されており、全国どこの公証役場でも必要書類(戸籍等)を持参すれば、亡くなった方の遺言書の有無を検索することができます。

ただし、公正証書遺言の作成には手数料がかかります。作成費用は法定されており、遺言の目的である財産の価額に応じて定められています。

遺言される方が、病気や高齢のため公証役場に赴くことができない場合には、公証人に出張してもらうこともでき、字が書けなくなっても公証人が遺言者の真意を正確に文章にまとめてくれるので、そのような場合にはとても有用です。

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