相談事例

CASE

自筆証書遺言書保管制度について、従来の自筆証書遺言や公正証書遺言との違いを教えてください。

2020.08 担当者 の回答

1-1.自筆証書遺言(本人が保管)

一般的にイメージされる遺言書はこの方式だと思いますが、遺言者の気が向いた時に書くことが出来ることから最も簡易な方式と考えられます。しかし要件を満たしていなければ無効となってしまうため、注意が必要です。

要件

遺言者に遺言能力があること(遺言作成時に15歳以上であり、意思能力がある)

本人が全文、日付及び氏名自書し、これに押印すること
自書とは自筆で書くことですので、パソコン等での作成や代筆は認められません。但し、財産目録についてはパソコン等での作成、遺言者以外の人による作成、通帳や登記簿謄本のコピー等も認められます(自書によらない財産目録の記載については、毎葉に署名押印が必要)。
封筒に入れて封印します。

 

メリット

手軽で自由度が高い(どこでも、いつでも作成できる)

遺言の内容を秘密にできる

手数料が不要

 

デメリット

専門家による遺言書内容のチェックがないため、遺言者死亡後に不備や趣旨が明確でない部分(相続財産の特定、相続の割合など)が判明する可能性があります。その場合、当該遺言書を使っての不動産登記や銀行等での相続手続きが出来ず、遺産分割協議が必要となります。

遺言書を自分で管理するため、相続人等による偽造・改ざんリスクや、遺言者の死亡後、誰にも遺言書が発見されない可能性があります。

自書能力が必要(添え手によって作成された自筆証書遺言は原則としては無効)

遺言者の死亡後、家庭裁判所の検認手続が必要

1-2.自筆証書遺言(法務局で保管)

要件

1(本人が保管)と同様

遺言書はスキャナーで読み込むため、A4サイズ、片面、ホッチキス留めしていないものを準備します。(封筒は必要ありません)
その他の注意事項 http://www.moj.go.jp/content/001318459.pdf
法務局HPの遺言書様式 http://www.moj.go.jp/content/001321932.pdf

本人確認のための「顔写真付き身分証明書」が無い場合、この制度は利用できません。

 

メリット

法務局に保管するため勝手に見られる心配もなく、相続人等による偽造・改ざん、誰にも発見されないということを防止できます。

遺言者の死亡後、家庭裁判所の検認手続が不要

遺言者の死亡後、相続人や遺言書に記載されている受遺者、遺言執行者等(以下、「関係相続人等」といいます。)は全国の遺言書保管所において、以下の手続きができます。
a. 特定の死亡者について、自己(請求者)を関係相続人等とする遺言書が保管されているかどうかを調べること(遺言書保管事実証明書の交付請求)
b. 遺言書の内容を見て確認すること(遺言書の閲覧請求)
c. 遺言書の内容の証明書の交付を請求すること(遺言書情報証明書の交付請求)
*遺言者の生前は、関係相続人等により上記手続きを行うことはできません。

遺言者の死亡後、遺言書の存在を関係相続人等に知らせるための通知制度(2種類)があります。
(1)関係遺言書保管通知
 遺言者の死亡後、関係相続人等が上記③b.又はc.の請求を行った際に、遺言書保管官がその他の関係相続人等に対して遺言書が保管されている旨を通知します。(誰も当該請求をしなければ、この通知は行われません。)
(2)死亡時通知(本格的な運用は令和3年度以降)
 遺言書保管官が遺言者の死亡の事実を確認した時に、遺言者が指定する者に対して遺言書が保管されている旨を通知します。(この通知は希望する遺言者についてのみ実施されます。)

 

デメリット

手数料が必要
<遺言者の生前>
遺言書の保管申請:1件3,900

<遺言者の死後>
遺言書保管事実証明書の交付請求:1通800
遺言書の閲覧請求:1回1,400円(モニターによる閲覧)、1,700円(原本の閲覧)
遺言書情報証明書の交付請求:1通1,400

遺言書保管の申請には、管轄する遺言書保管所本人が出頭する必要があります。(要予約)
 遺言者の「住所地」「本籍地」「所有する不動産の所在地」いずれかを管轄する法務局

遺言者が生前に住所・氏名等を変更した場合、遺言書保管所へ届出を行う必要があります。(郵送可、手数料不要)
遺言書に受遺者や遺言執行者の住所・氏名等を記載している場合、これらの事項に関する変更があった場合も同様の届出を行う必要があります。

遺言書の作成に関する相談については法務局では一切応じないため、11(本人が保管)と同様に不備があった場合には相続手続きに使用することができない可能性があります。

1(本人が保管)と同様に自書能力が必要

2.公正証書遺言

法律専門家である公証人が作成する遺言書です。

要件

2人以上の証人の立会いがあること

遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で述べること

公証人が遺言者の口述を筆記し、その内容を遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること

遺言者および証人が筆記した内容が正しいことを承認した後、各自が遺言書に署名、押印すること
(遺言者が署名できない場合、公証人がその理由を付記して署名に代えることができます。)

公証人が、①〜⑤に従って遺言書を作成した旨を付記して、遺言書に署名、押印すること

 

メリット

公証人が遺言書を作成するため、形式や要件の不備により遺言が無効になることがなく確実

遺言者の死亡後、家庭裁判所の検認手続が不要

公証役場で保管されるため、勝手に見られる心配もなく、相続人等による偽造・改ざん、誰にも発見されないということを防止できます。

遺言者が公証役場に出頭するのが難しい場合、公証人に来て貰うことも可能

自書能力は不要

遺言者の死亡後、相続人その他法律上の利害関係者は公証役場において、以下の手続きができます。
a. 特定の死亡者について、生前に公正証書で遺言を作成していたかどうかを調べること(遺言検索)
検索の対象は、昭和に作成した遺言については依頼した役場のみ、平成以降に作成した遺言については全国の役場になります。
b. 作成履歴があった公証役場において遺言公正証書の原本を見て確認すること(遺言公正証書の原本閲覧)
c. 作成履歴があった公証役場において遺言公正証書の謄本の交付を請求すること(郵送請求および受領も可)(遺言公正証書の謄本交付)
*遺言者の生前は、相続人その他法律上の利害関係者により上記手続きを行うことはできません。

 

デメリット

証人が必要(未成年者、推定相続人、受遺者及びその配偶者並びに直系血族は不可)

公証人と証人には遺言の内容を知られることになります。

手数料が必要
<遺言者の生前>
遺言書の作成:
相続人・受遺者毎に相続又は遺贈する財産の価額で手数料を算定します。
その他の手数料を含めて費用は一般的なご家庭の場合、5万円〜10万円程度

<遺言者の死後>
遺言検索:無料
遺言公正証書の原本閲覧:1回200
遺言公正証書の謄本交付:ページ1枚につき250

 

自筆証書遺言 公正証書遺言
本人保管 法務局保管
検認 必要 不要 不要
形式的要件のチェック
内容のリーガルチェック
毀損・変造・隠蔽の可能性
本人の出頭 不要 必要 本人が出頭 又は
公証人が出張
証人 不要 不要 2人以上必要
費用 3,900円 5万円〜10万円程度

遺言者の意思を確実に実現し、遺言者死亡後の相続手続きを円滑に進めることを重視するのであれば、やはり公正証書遺言が最も安心だと思います。

新しくスタートした自筆証書遺言の法務局による保管制度も、本人が保管する自筆証書遺言と公正証書遺言双方の良い部分を組み合わせた形になっており、内容について法律相談をした上で遺言書を作成するのであれば、比較的安価に公正証書遺言と同程度の安全性も確保できますので、利用しやすい制度だと思います。通知制度があるのも法務局による保管制度の魅力ですが、この通知制度を正しく機能させるためには、遺言者や受遺者等の住所・氏名等が変わった際には都度変更の届出が必要です。

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