相談事例

CASE

会社の行方不明株主への対策を教えてください。

2016.7   担当者 の回答

1)なぜ株主が行方不明になるのか?

株主の中には、住所が分からず連絡がつかない人がいるかもしれません。はじめは、住所や氏名を把握していたものの、長い年月が経過する間に住所が変更になったり、氏名が変わったりするケースがあります。その場合、当該株主が変更内容を会社に連絡してくれればよいのですが、そうでない場合は、会社はそれに気づかず、連絡がつかなくなってしまったということは十分考えられます。また、株主が死亡して相続が発生しているため、誰が株主となったのか分からない(相続人が誰なのか、遺産分割協議がされたのか、事情が分からない。)ケースもあります。

 本来、株式会社は、1年に1回は定時株主総会を開催する必要があるため、株主に対して株主総会の招集通知を発送したり、委任状の送付を受けたりして、株主と定期的に連絡をとっているはずです。しかしながら、特に中小企業や同族企業においては、経営者が株式の大半を保有していることから、株主に対して招集通知の発送をしておらず、議事録だけを作成している会社もあると思います。これを改め、株主に対してはきちんと招集通知を発送するなどして、少なくとも1年に1回は株主の現状を把握することが重要です。中小企業や同族企業では、比較的株主の人数も少なく、お互い顔見知りである場合も多いと思われますので、株主の現状把握は比較的やりやすいのではないでしょうか?

2)行方不明株主への対応はどうしたらよい?

株主が行方不明になったからといって、会社や経営者が勝手に当該株主の株式を売却することはできません。当該株式を処分するには、一定の手続きをとる必要があります。

 会社法第1961項「株式会社が株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達しない場合には、株式会社は、当該株主に対する通知又は催告をすることを要しない」、この規定により、通知又は催告をすることを要しないとされたもの及びその株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったもの、いずれにも該当する場合には、当該株式を競売し、その代金を株主に交付することができます(会社法第1971項)。5年以上継続して通知又は催告が到達しないことを証明するために、株主総会の招集通知や戻ってきた封筒等の書類は保管しておく必要があるでしょう。

 上記要件を満たす場合には、当該株式を処分・換価することができるわけですが、原則として競売によることとされています。例外として、競売以外でも、市場価格のある株式についてはその価格をもって売却することができますし、市場価格のない株式であっても裁判所の許可を得ることによって競売以外の方法でも売却できます(会社法第1972項)。この場合は、会社自身が当該株式を買い受けることも可能ですが、自己株式の取得に該当するため、その財源に関する規制があることに注意が必要です。また、その売却代金については行方不明の株主に交付されるべきものですが、実際に交付することは事実上不可能ですので、会社は売却代金を供託することが望ましいでしょう。

3)行方不明株主を出さないために

以上のような手続きのほかにも、不在者財産管理人を選任したり、株主の相続人がいないときには相続財産管理人を選任したりする方法もありますが、いずれも裁判所の関与が必要で、労力と費用を考えると得策とはいえません。やはり、株主名簿をきちんと整備して、少なくとも毎年の定時株主総会の時期に定期的に見直しを行うことが重要だと考えます。また、株主の人数が増えてしまった場合は、経営者が株式を買い取るなどして、株主を絞り込むことも考えられます。

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