相談事例

CASE

頼れる人が身近にいないため、専門家に自分の老後を託したいと考えていますが、不正の問題も耳にします。信頼できるか相手を見極めるために注意すべき点を教えてください。

2016.7 櫻井 の回答

2016年(平成28)3月、公益財団法人日本ライフ協会が破産しました。当該法人は、高齢者・障がい者のための生活支援及び葬送支援を業務とし、施設入所や入院の際の身元保証、通院の付き添い、安否確認、介護事業、万一の時の対応、葬儀、納骨、墓地管理まで、さらに、共助事務所で財産管理、任意後見契約の締結、法定後見の申立、遺言の作成等も請け負う仕組みとなっており、お年寄りの心配事を全て丸ごと引き受けますと謳っていました。人により異なりますが、契約時150万円から200万円を支払い、内50万円位が葬儀等の預託金となっていました。年会費や個別の支援には別途費用が掛かります。日本全国に支店があり、会員数は約2600人に上ります。理事長が預託金約2億7千万円を流用し破産に至ったものです。私も大阪で開かれた債権者集会に出席しました。集まった300人近いお年寄りは、お金が返ってこない怒りよりも、老後の安心を突如失い途方に暮れているというのが実情とお見受けしました。

多くの方は、身元保証人がいないというと、施設や病院、はたまた市の担当者からも当該法人を紹介されていたようで、営業マンから、「公益」イコール「政府のお墨付き」、「内閣府の一員」、「政府が後押ししているから絶対に潰れない」と言われ、安心して契約したとのことでした。

 

当該法人が公益認定を受けることができたのは、預託金を共助事務所である、司法書士や弁護士が預かることにより担保できるという点にありました。つまり、契約はお年寄り、当該法人、共助事務所の三者(これを、「三者契約」といいます。)で行うことが原則でした。しかし、実際には三者契約より契約費用が安い、お年寄りと当該法人との間のみで契約をする「二者契約」が多かったようです。破産した場合、二者契約では預託金の一部しか返ってきません。

 

2016年(平成28)現在、当該法人のような法人が全国に少なくとも100社はあり、どんどん増加していると思われます。当該法人の元従業員が同様の法人を立ち上げているとも聞いています。高齢者の単身世帯が急増しています。そんなお年寄りにとって、入所時や入院時に求められる身元保証は大きな問題で、まして、一ヶ所で全ての老後の心配事を解決してもらえると聞けば、飛びつく気持ちもよく分かります。

 

しかし、それはとても危険な側面があります。契約とは、本来、契約の当事者同士で相手方がちゃんと契約通りのことを履行してくれるかどうか互いにチェックすることで成り立つものです。ところが、お年寄りが終末まで、更には死後のことまでを託すこのような契約では、一方の当事者であるお年寄りの判断能力はどんどん衰えていくわけで、お年寄り自身が契約相手の履行の状況を最後までチェックすることは不可能です。従って、このような契約には、必ず、きちんと契約が履行されているかどうかチェックしてくれる「第三者の目」が必要です。

 

後見業務はある意味とてもまどろっこしいものです。後見人は何でもできるわけではなく、色々な手配をする人です。ご本人の意向をお聴きし、ご親族、ケアマネジャー、地域包括支援センター、地域の方にご本人の歴史や日々の生活のご様子をお聴きし、ご本人に寄り添いご本人の最善を考えて手配します。しかし、介護は介護事業所が、ケアプランはケアマネジャーが、施設に入居されれば施設の相談員が、入院されれば病院のケースワーカーが、ご本人には多くの別々の機関が係わります。財産管理も裁判所や任意後見監督人等、或いは私が所属する公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートでは独自に内部で指導監督制度を設け、ダブルチェックするシステムをとっています。後見人が独断で業務を行っていくことは不正や不適切な業務につながる危険があるので避けなければならないからです。

 

老後の人生を託す際のキーワードは「第三者の目」です。「第三者の介在」があるかどうか、「透明性」が図られているかどうか、業務を監督する機関がしっかりしているかどうかです。老後の人生を託される者は、その業務の重さ、権限の大きさに畏れを持たなければならないと思います。業として行う場合も、公的業務に近いものであることを忘れてはならないと思います。お年寄りが大切に貯めたものを無にしてはならないし、最後に託された信頼を決して壊してはならないからです。

ページTOPへ