相談事例

CASE

信託を利用した後継ぎ遺贈について教えてください。

2015.1   担当者 の回答

信託を利用すれば遺言では不可能なことが実現できます。

遺言はご存知の通り、自分が生前有した財産を誰に「相続」或いは「遺贈」させるか、自分の意思を残しておくものです。しかし、遺言では1番目に「相続する人」或いは「遺贈を受ける人」しか決めることができません(以下、「相続」と「遺贈」併せて「取得」と表現します。)。

ところが、信託を利用すると2番目以降に取得する人を決めることができます。つまり、自分が死亡してから30年目の受遺者の次の人まで自分の財産を順番に取得する人を決めることができるのです。但し、信託の場合、「取得」といっても所有権ではなく「受益権」という財産から生じる経済的利益のことを指しています。

 

将来まで取得者を指定し、未来へ財産を引き継いでいくことを実現する方法として、「遺言信託」「遺言代用信託」の二つの方法があります。

「遺言信託」は遺言者が遺言で信託を行うもので、遺言の効力発生(つまり、遺言者の死亡)によって信託の効力が生じます。したがって、遺言と同様、検認手続や遺言執行などが必要となり、取得者への財産引継までに時間がかかります(これは銀行が大々的に広告している遺言信託とは別物です。)。

他方、「遺言代用信託」は財産を所有している人(委託者)が生前の信託契約によって、あらかじめ財産を取得する人を定めておくもので、信託の効力は委託者が健在のうちに発生します。したがって、検認手続きや遺言執行行為を要することなく、委託者の死亡後も契約内容をスムーズに実現できるという点が特徴です。

 

今回は実際によく利用されている後者について具体例を交えてご説明します。

《具体例1》

太郎には離婚した先妻との間に子供の一郎がいます。現在、太郎は花子と再婚していますが、2人の間には子供はおらず、太郎の財産は自宅だけです。

太郎が遺言を書かなければ、自宅は一郎と花子が2分の1ずつ相続することになり、2人で自宅をどうするか話し合わなければなりません。太郎が遺言で「花子に自宅を相続させる」とすれば、遺留分の問題はありますが、花子1人で太郎の自宅を相続することができます。

問題は、太郎に続き、花子が亡くなったときの相続です。太郎の自宅は花子の相続人(花子の兄弟姉妹や甥姪等)が相続することになります。太郎の遺言に「花子が亡くなった後は一郎に相続させる」と書いても無効です。ところが、遺言代用信託を利用すれば、第1の受益者を太郎とし、太郎が亡くなった後の第2の受益者を花子とし、花子が亡くなった後の第3の受益者を一郎に、一郎が亡くなった後は一郎の子供に、と太郎の自宅の取得の順番を太郎が決めておくことができます。また、最後の帰属者を一郎として信託を終了させることもできます。

《具体例2》

資産家の健の相続人は重度の知的障害のある子供の光だけです。健は自分の財産の全てを光のために・・・と思いますが、おそらく使い切ることはできないので、残った財産は光がお世話になった施設に寄付ができればと思っています。しかし、光には遺言を書く能力がなく、さらに光には推定相続人がいないため、健が何もしなければ、光が亡くなった後は残った財産は全て国庫に帰属することになります。

そこで、遺言代用信託を利用し、第1の受益者を健とし、健が亡くなった後の第2の受益者を光とし、光が亡くなった後は残った財産の全てを施設に帰属させれば、健の思いを実現することができます。

このように遺言代用信託を利用すれば、自分の財産の行方を先々まで決めておくという遺言ではできないことが実現できます。

信託は先々まであらゆる場面を想定して契約書を作成しなければならず、また、受託者を誰にするかもポイントです。

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