相談事例

CASE

被後見人による社会保障制度の利用と申請手続きの壁 ~制度の支援を受けるための「情報収集」「書類の準備」「申請」は誰がする?~

2022.7 櫻井惠子

マスコミでは成年後見制度への批判が目立ちます。奥本先生が後述されている後見人の努力は残念ながら余り表に出てきません。何故でしょうか。私たちが支援させて頂いている被後見人の方は、身寄りがない方や家族と疎遠の方が多く、既に認知症を発症されているため、ご本人からのメリットの発信が期待できないからです。ただ、後述のようなメリットは役所に申請しなければ享受できないものです。

私は難病にかかった母の種々の申請手続きに辟易しました。多少他の方よりこのような申請に慣れていると思っていましたが、母の住んでいた遠方の役所に何度通ったことか。申請窓口で、担当者同士の机は隣でありながら申請の種類が違うからと全く同じ医師の診断書を再度取るように言われた時には唖然としました。介護に疲れ果てている家族に何故こんなことを強いるのか? 家族がいなければ誰がこの手続きをするのか?つくづく考えさせられ、申請主義の弊害とプッシュ型行政の必要性を痛感しました。

後述されていることは、その支援を必要とする人が享受できる権利です。しかし、手続きをしなければ受けることのできない権利でもあります。一度、利用できるものがないか検討してみてください。

 

後見人が行う財産管理とは? ~埋没しているご本人の権利を探し出して行使します~
司法書士 奥本孝子(元司法書士法人さくら国際所員)

後見人の業務の中で「財産管理」は最も重要なものですが、一口に財産管理といっても、単にご本人の預金通帳などを預かり、収支の管理、各種支払いを行うだけではありません。「本来受け取る権利があるのに受領が漏れているものはないか」「払わなくてもいい費用の負担をしていないか」についても常に考慮しています。

被後見人の方は、年齢や心身の衰退が進むにつれて生活環境や利用する医療・介護サービスなども変化していくことが多く、その状況に応じた最適な収支の確保が必要です。

年金のもらい忘れ

被後見人の多くは年金受給者ですので、複数の勤務先で仕事をした方の場合、企業年金のもらい忘れがないかを確認します。そのためご本人やご家族からは、短期間でも勤務した企業の名前、勤務期間、所在地等、断片的であってもできるだけ多くの情報を収集します。特別給付年金、遺族年金、障害年金、傷病手当金等の請求は可能か、場合によっては、労災、失業給付等も考慮します。

確定申告 ①医療費控除

年間の収入が年金のみで400万円以下の場合、確定申告は原則不要ですが、控除の事由がある場合には、申告することで源泉徴収された税金の還付が受けられることがあります。代表的なものは医療費控除ですが、診療費や薬代だけではなく、介護サービス利用料金にも対象となるものがあります。(施設に入所している場合はその施設によって取扱いが異なります。)おむつの使用がある方は、医師におむつ使用証明書を発行してもらい、おむつの代金も医療費に計上します。

確定申告 ②特別障害者控除

後見人選任の審判を受けた方は、税法上も「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当するとされており、40万円の特別障害者控除の対象になります。同一生計配偶者や扶養親族に障害者がいる場合もその控除を申告できます。被後見人でなくても、精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳保持者のほか、精神または身体に障害のある満65歳以上の人で、その障害の程度が上記対象者に準ずるものとして市町村長等や福祉事務所長の認定を受けている人も控除を受けられます。この認定は、お住いの市区町村長に障害者認定の申請をし、障害者または特別障害者相当に該当すると認められれば、期間を区切って認定証が交付されます。

確定申告 ③寡婦控除、配偶者控除、扶養控除

夫と死別して再婚していない人で、一定の所得条件を満たす場合、寡婦控除を申告します。配偶者や扶養家族についての控除も確認します。

介護保険負担限度額認定証による負担軽減

被後見人が介護保険施設に入居する場合、できる限り費用負担を減らす方法を探ります。介護保険施設を利用する場合の食費や、ショートステイ利用料金も含めた居住費は、介護保険負担限度額認定証があれば軽減を受けることができます。この認定証を受けるためには、本人及び世帯全員について住民税が非課税で、預金が一定額以下であることが第一条件です。住民税の金額は各人の所得によって決まるため、今までに述べた各種控除により所得が減ることで条件に該当する場合もあるのです。

介護保険施設の入居を急ぐ場合や、入居費の支払があるのに手持ちの資金が少ない、など介護保険負担限度額認定証を早く発行してほしい、という場合も多くあります。その場合、後見人は、まず最大5年分遡ってご本人の確定申告をします。確定申告書は税務署で国税の額確定の後、住民税決定のため各市町村へ送られますが、手続きを早めるため、国税と同様に過去の年度分を含めた住民税の申告書も市町村へ提出し、早急に非課税の認定を受けたい旨も伝えておきます。

生活保護の申請

後見人は、被後見人ご本人の収入と財産の確保に努め、支出をしっかり算出するため、後見人が就任すると無駄な出費がなくなり、家計はほぼ必ず改善します。それでも収入が国の最低水準より少ない場合には、ご本人のために生活保護の申請を行います。(保佐人や補助人の場合には、本人の使者という立場から申請することもあります。)

保険金や還付金の調査

ご本人が入院したり病気にかかったりした場合、その費用の支払だけでなく、保険金や還付金受領の要件を調査し、該当する場合は手続きを行います。

このように、後見人は、ご本人が漏れなく各種サービスを利用し、行使できる権利を確保できるよう常に研鑽に励んでおります。精神的、経済的、様々な面から、ご本人にとって力強い味方であると実感して頂けるような後見人でありたいと思っています。

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