相談事例

CASE

在日韓国人が遺言書を作成する場合に注意すべき点はありますか?

2019.5   櫻井 の回答

在日韓国人の方の相続では、韓国の戸籍に不備(出生・婚姻や子供の記載がないなど)があり相続人の確定が難しい場合や、日本と韓国の相続法の違いにより様々な問題が発生する場合があります。残された家族が韓国語を話せない場合には、韓国にある相続財産を探すのも証明書を取り寄せるのも大変です。複雑な相続手続きでご家族が苦労されないように遺言は必ず作成しておくことをお勧めします。

では、次の事例を基にご説明します。

【事例】

遺言者A…韓国籍、特別永住者、大阪市中央区在住

Aの妻B…日本人の後妻、Aと共に大阪市中央区在住

Aの子C…韓国人である先妻Dとの間の子供、韓国籍、韓国在住

Aの財産…日本に不動産と銀行預金、韓国に不動産と銀行預金

「海外にいる日本人が遺言書を作成するにはどうすれば良いですか?」の場合と同様に、自筆証書遺言は手軽に作成できますが、遺言者が亡くなった後、日本、あるいは韓国の裁判所で検認手続きが必要となります。スムーズに遺言執行が行われるためには、日本の相続財産に関しては、日本の公証役場で日本法の方式により公正証書遺言を作成し、韓国の相続財産に関しては、日本の韓国領事館あるいは韓国の公証役場で韓国法の方式による公正証書遺言を作成しておくのが最もよいのではないかと思われます。

 

公正証書遺言には、以下の内容を記載しておくことが大切です。

①自分の相続人は誰か

韓国にも日本と同様の戸籍制度はありました。しかし、在日の方は必ずしもすべての戸籍関係の届出を韓国領事館にされているとは限りません。相続関係を証明する書類の収集に時間がかかることや、必要十分なものを取得することが困難なこともあります。また、韓国では、2008年(平成20年)11日から従来の戸籍が廃止され、個人単位の登録に変わりました。兄弟姉妹の登録も簡単に取得することはできなくなりました。遺言書の中で自分の相続人を明示しておきましょう。

②相続の準拠法

何も指定しなければ相続の準拠法は遺言者の本国法である韓国法になりますが、韓国では相続の準拠法の選択を認めています。準拠法を日本法と指定しておけば、「誰が相続人か」、「相続人の法定相続分はどうなるか」等、相続に関する法律関係は日本法に基づいて考えればよいことになります。それぞれの国の法務局や金融機関での手続きの煩雑さを考えると、日本にある財産については日本法を、韓国にある財産については韓国法を指定した方がよいでしょう。

③遺言執行者は誰か

韓国では遺言で遺言執行者を指定しなかった場合、相続人が遺言執行者となり、相続人の過半数の協力がなければ遺言執行ができません。遺言で遺言執行者を決めておくことは重要です。

韓国も日本も相続開始の時から被相続人の財産も負債も全て包括的に相続人に承継されるという「包括承継主義」を取っているため、上記のように公正証書遺言を2通作成しておくことは問題ありませんが、複数の遺言書を作成する場合には、内容に矛盾がないようご注意ください。

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