相談事例

CASE

妻は必ず遺産を相続できるのでしょうか?

2011.1(2019.4修正) 担当者 の回答

1)遺言が最優先

「私は妻だから相続財産の2分の1を相続する権利がある」

「私には3分の1相続する権利があるのに放棄させられた」

民法に規定されている法定相続分※は、さも確固とした権利であるかのように思われていますが、「物を売って、代金を支払ってもらう権利」のように法律が絶対的に守ってくれる権利とは少し意味合いが異なります。私たちは自分の財産は自由に処分することができます。同様に、自分の財産の死後の処分を遺言で自由に決めることができます。したがって、亡くなった人の財産(遺産)は、先ず遺言書があれば遺言書のとおりに分配されます。遺言書に「私の財産は全て愛人Aに遺贈する。」となっていたら、遺言執行者は相続人の同意を得ることなしに不動産も預金も全てA名義にすることができます。今は空前といわれる遺言書作成ブームですが、日本ではこれまで遺言書があることはまれでしたから、遺言書が一番ということは余り意識されてきませんでした。

次に、遺言書がない場合は、遺産はいったん相続人全員の共有財産となります。そして相続人は全員の話し合い(遺産分割協議)で法定相続分によらず自由に遺産を分割できます。遺産が自宅だけで、相続人が妻と子供2人の場合、3人の合意で妻ひとりの名義にできます。遺言書があっても相続人全員が一致すれば遺言の内容と異なる分割も可能な場合があります。司法書士事務所で扱う相続登記は遺産分割協議によることが多いですが、このことは意外に知られていません。

そして遺言書もなく、遺産分割協議もまとまらなかったとき、最後に登場するのが、法定相続分による分割です。相続人間の争いが裁判所に持ち込まれて調停が不調であれば、裁判所は機械的に法定相続分に従って相続財産を分けていきます。その時、法定相続分は絶対的です。

※法定相続分

民法第900条により定められている、相続人の間での遺産の取得割合。亡くなった方との続柄ならびに同順位の相続人の人数により算定されます。

  1. 配偶者と子が相続人であるときは、配偶者は2分の1、子の相続分は2分の1
  2. 配偶者と直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は3分の2、直系尊属の相続分は3分の1
  3. 配偶者と兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は4分の3、兄弟姉妹の相続分は4分の1

2)遺言でもってしても奪われない権利「遺留分」

このように、遺言に書かれたことは法定相続分より優先します。遺言があるとき「私は妻だから法定相続分の権利がある」とはいえないのです。でもご安心ください。法定相続人のうち兄弟姉妹以外の相続人(以下、配偶者、子、直系尊属をあわせて「配偶者等」といいます。)には遺留分が認められています。これは強固な権利です。

遺留分制度とは、配偶者等に一定程度の相続財産の取得を認めた制度です。簡単に申しますと、亡くなった方がどのような遺言を残していようと、配偶者等は、自ら権利を行使すれば、法定相続分の半分~3分の1は確保できるのです。遺留分はこの、「法定相続分の半分~3分の1」の確保しうる相続財産のことをいいます。

遺留分額算定の基礎となる財産(以下、「おおもとの財産」といいます。)は、亡くなったときに存在した財産に限られません。亡くなる前1年以内の贈与であれば、これも併せておおもとの財産となります。遺留分権者に損害を加えることを知ってなされた贈与であれば、亡くなる一年以上前になされたものでも、おおもとの財産に加算されます。さらに、共同相続人への特別受益にあたる贈与は、そのなされた時期や遺留分侵害の認識にかかわらず、すべておおもとの財産に加算されます。つまり、遺言者の相続人が妻と子供B及びCの場合、全財産を愛人Aに遺贈しても、妻はおおもとの財産の4分の1、B及びCも各々8分の1は確保できるのです。

  注意しなければならないのは、遺留分は行使しなければ当然には取得できないことです。また、この権利を行使できる期間はとても限られています。相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間、相続開始の時から10年を経過したとき消滅します。

相続人にとっては大変有難い制度ですが、逆に遺言で財産を譲り受けることになっている人からすると、とても鬱陶しい制度です。「遺留分を頂戴!」と請求されることで、不要な争いが起きかねません。遺言を残す立場としては、折角争いを防止するために遺言書を作成するのであれば、遺留分を犯さない遺言書の作成が争族させないコツかもしれません。このように相続には意外な落とし穴があるのでご注意ください。

(2019年(令和1年)7月1日遺留分の規定は改正されます。①遺留分減殺請求権から生ずる権利が金銭債権化されます。②受遺者等の請求により、裁判所が、金銭債務の全部又は一部の支払いにつき相当の期限を許与することができるようになります。)

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